人手不足や業務効率化といった課題を解決する手法として注目されているのが、AIのディープラーニングを活用した、画像による異常検知技術です。今回の記事では、画像による異常検知の概要とともに、AIを活用した画像による異常検知を導入するメリットや仕組みについて解説します。
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画像を使った異常検知とは
画像を使った異常検知は、さまざまな現場や分野への導入が進められている技術です。画像を使った異常検知の概要について解説します。
異常検知とは
異常検知とは、蓄積された多数のデータを元にデータを比較し、振る舞いが違うデータを検出する技術です。異常検知の技術によって、人が目視でも確認できるかんたんな異常から、機器の故障前などの目視では確認できない複雑かつ微細な異常まで発見することができます。
異常検知の代表例は以下のものがあります。
・クレジットカードの不正使用の検知
・システムの故障検知
・異常行動検知 など
画像に限らず、正常パターンを学習させ、その正常パターンから外れる行動が起きた際に「異常」として検知します。
異常検知については以下の動画も参考にしてください。
画像を使った異常検知とは
異常検知の代表的な手法として、AI(人工知能)を活用した画像判定による異常検知があります。
読み込まれた画像データを元にAIがデータを比較することで、瞬時に正常と異常を見分けることができます。AIを活用した画像による異常検知を実施する際には、比較対象となる最新の画像をその場で撮影してAIにリアルタイムで読み込ませ、その場で検知可能です。
AIを活用した画像による異常検知は、製造業をはじめとしたさまざまな分野での導入が進められています。
たとえば製造業では、ベルトコンベア上でラインを流れてくる製品に対して、AIによる異常検知を活用しています。今まで人の目や手によって行われていた製品検査が、AIを活用した画像による異常検知によって実施されることにより、業務の効率化や省人化につながっています。
画像を使ったAIによる異常検知を導入するメリットと課題
画像を使ったAIによる異常検知を導入するメリットと課題について解説します。
メリット
画像による異常検知にAIを活用するメリットには、以下のものがあります。
・生産性の向上
・属人化の防止
・精度の高い検知の実現
順に解説していきます。
生産性の向上
AIを活用した画像による異常検知では、生産性の向上が期待できます。今まで人間の目視や手による検査では、以下のような課題が発生していました。
・検査担当者のコンディションによって検査精度が変動する
・新しい不良項目が増えると、検査担当者の増員が必要な場合がある
・検査担当者ひとりあたりの負担が大きい
AIを活用した画像による異常検知を導入することで、人間の目視や手による検査で発生する課題を解決できます。不良に対する検査精度が向上するだけでなく、検査工程での省人化が進むことで、人件費を削減できたり生産工程などより人員が必要な業務への増員も可能です。適材適所の人員配置による生産性の向上につながることが期待できるでしょう。
属人化の防止
AIを活用した画像による異常検知を導入することで、属人化を防止できます。
目視や手による従来の検査では、検査員の経験や知識、スキルなどが異常検知の精度に深く関わります。そのため、熟練の検査員に頼らざるを得ず属人化が起きています。少子高齢化などの影響により後継者となる検査員が育ちにくいため、さらに属人化は進みやすい状況と言えるでしょう。
また、AIを導入していない従来型の画像認識方法では単純な不良の検出しかできないことに加えて、検査員の高いスキルや経験が求められる、各検査項目のモデル化も必須でした。そのため、従来の検査方法はいずれも属人化が進みがちと言えるでしょう。
AIを活用した画像による異常検知は、検査員による判断を代わりにAIが行うことで、偏りなくいつでも高精度の判断を実現できます。検査員はもちろん、各検査項目のモデル化も不要となるため、技術者の属人化も防げます。
高度な検知の実現
AIを活用した画像による異常検知を行うことで、高度な検知が実現します。
AIの高度なコンピュータシー処理能力と、高画質な画像センサーにより、人間の目や手では発見が難しい異常も検知できるでしょう。(ただし、解像度が高すぎると処理時間やストレージの必要量が大幅に増える可能性があり、画質と計算効率のバランスをとる必要があります。)
近年は特に精密化した製品が多く誕生しているため、人間の目視だけでは異常の発見に限界があります。また、生産数が多く単価が低い製品の検査は、人間による検査では採算が取れない問題も発生しています。
AIを活用した画像による異常検知を取り入れることで、短時間で多くの製品を高度な検知によって検査できるようになります。
課題
AIを活用した画像による異常検知は、異常データの不足というボトルネックがありました。
異常検知は、AIに正常なデータと異常データの両方を学習させることで異常を検知する精度を高めていくことが基本です。高精度で異常検知を行うためには、その分、大量のデータが必要です。
しかし正常データは十分に取得できるものの、異常が発生すること事態が稀であったり多品種少量生産であるために、異常データの数が不十分であるといった課題がありました。
近年はさまざまな異常検知の手法が開発され、現在では異常データが不要な「教師なし学習」によって画像による異常検知も可能です。
画像による異常検知技術の導入を検討する際には、現場に適した手法であることが非常に重要なのです。
テクノプロ・デザイン社なら、製造業におけるAI導入について豊富な経験があります。全国に広がる30以上の拠点から、さまざまなAIの構築を迅速・的確に支援します。ご検討の際にはぜひご相談ください。
ディープラーニングを活用した画像による異常検知の仕組み
画像を使った異常検知にはさまざまな手法があります。ここではディープラーニングを活用した代表的な以下の3つの手法について解説します。
・自己符号化器
・敵対的生成ネットワーク
・ハイブリッドモデル
自己符号化器
自己符号化器とは、ニューラルネットワークを活用した一種の「教師なし機械学習」です。オートエンコーダーとも呼ばれています。
自己符号化器では入力されたデータを符号化し、一度別のものへと転化したのちに、まったく同じデータへと復元できるようにプログラムされています。正常な画像データを与え学習させることで、正常データを圧縮した上で正確に復元するためのネットワークが作られます。
そして学習を繰り返すことで、正常な画像データ入力⇒圧縮⇒正常な画像データを復元という流れが定着します。
正常データの学習後に異常な画像データが入力された場合、正常なパターンしか学習していないことで、異常データを上手く扱うことができません。そのため入力された異常データは圧縮後は元通りに復元できないため、「異常である」と検知されます。
自己符号化器では「異常」を学習していないことで、正常かそれ以外であるかを見分けます。多くの異常を学習する機会が少ない製造現場にとって、自己符号化器による画像による異常検知は利用しやすい手法と言えるでしょう。
自己符号化器による異常検知については以下の動画も参考にしてください。
敵対的生成ネットワーク
敵対的生成ネットワークとは、「生成器(Generator)」と「識別器(Discriminator)」のふたつのニューラルネットワークを併用し、データの生成分布を学習するモデルのことです。「教師なし学習」に分類される画像検知手法のひとつで、英語名の「Generative Adversarial Network」の略語で、「GAN」とも呼ばれています。
生成器 | ランダムノイズを入力として受け取り、リアルなデータを生成するように学習する |
識別器 | 本物のデータと生成器が作った偽物のデータを受け取り、それが区別できるように学習する |
生成器はランダムノイズを入力とし、識別器が本物であると誤認するようなデータを生成します。はじめのうちは、簡単に偽物と判断されてしまいますが、それにより生成器は偽物と識別されないようなデータを作成しようとします。これが反復されることで、生成器・識別器だけで学習を深めていくことができます。生成器と識別器で競争させることで、入力データの学習成果を高めるのが特徴です。
そして、正常な画像データで学習を続けたことで、異常な画像データを「正常ではない=異常」として検知します。
敵対的生成ネットワークには、以下のようなものがあります。
・AnoGAN
・ADGAN
・f-AnoGAN
・EfficientGAN
ハイブリッドモデル
ハイブリッドモデルでは、ニューラルネットワークを用いて高次元データから重要な特徴量を抽出し、その後、従来の機械学習モデルで正常・異常を判定します。この手法の利点は、従来のアルゴリズムが小規模データセットやラベルの不足している状況でも安定した性能を発揮することです。
ハイブリッドモデルには、以下のようなものがあります。
・AE+GMM
・DAGMM
・DeepSVDD
・DeepSAD
まとめ
AIを活用した画像による異常検知の概要や導入するメリットと課題、仕組みを解説しました。AIを活用した画像による異常検知を導入することで、製造業をはじめとした現場や企業における。属人化や人手不足、業務の煩雑化といった課題解決が期待できます。
一方で、画像による異常検知の導入は、それぞれの現場に合ったものであることが重要です。検討の際は、全国に7000人以上のエンジニアを抱え、異常検知の導入・構築支援の経験豊富なテクノプロ・デザイン社にご相談ください。
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