モデルベース開発

vECU環境構築で複数ツールを連携 – FMU出力でVEOSとVectorをつなぐJUC2026展示デモ

デモ環境構築図

2026年9月17日、dSPACE Japan主催の「dSPACE Japan User Conference 2026(JUC2026)」が、TAKANAWA GATEWAY Convention Centerで開催されました。dSPACE Japanと連携するテクノプロ コンサルティング・パートナーズ社も出展し、vECU(Virtual ECU)環境構築のデモを展示しました。

今回の展示テーマは「複数の異なるシミュレーションツールの連携」です。サードパーティツール(Vector社vVIRTUALtarget)から出力したFMUを、dSPACEのVEOSへ直接実装する新しいルートも、あわせて実演しました。

本記事では、このデモ展示の内容を中心にご紹介します。

この記事で分かること

  • 展示会で紹介された、VEOSとVector環境を連携させるvECUデモの内容
  • 今年新たに追加された、FMU出力ルートの位置づけ
  • vECU/SILS導入における現場の課題
  • テクノプロが提供するvECU環境の構築支援
目次

まずは展示内容をご紹介 - VEOS×Vector環境の連携で何を示したのか

vECUとは、実機のECUの代わりに、ソフトウェア上でECUの動作を再現する技術です。実機が揃う前の開発初期から検証を進められる点が特徴です。
今回の展示で取り上げたのは、ECU開発の現場で起こりがちな2つの悩みです。

  • 複数の異なるシミュレーションツールを連携できない
  • SILS(Software-in-the-Loop Simulation)とHILS(Hardware-in-the-Loop Simulation)をシームレスにつなげない

SDV(Software Defined Vehicle)への移行が進み、ECU開発の初期段階から仮想環境で検証するニーズが高まっています。一方で、現場ではすでに複数のツールが使われており、それらを一つの検証環境にまとめる難しさが、導入の壁になりやすい点です。展示では、dSPACE社とVector社のツールを連携させるデモを実演し、こうした悩みへの解決策を提示しました。

デモ環境の構成 - 既存ルートとFMU出力ルート

デモ環境は、Vector環境で作成したvECUモデル(vVIRTUALtarget)を、dSPACE VEOS環境へ実装する構成です。ルートは2つあります。

既存ルート(Vector OpenSUT経由)
Vector OpenSUTのvECUを、テクノプロが実装したWrapperを介して、VEOS環境へ接続します。dSPACEとVectorの仕様の違いを、Wrapperが橋渡しする方式です。

新ルート(FMU出力)
vVIRTUALtargetからFMUを直接生成し、Wrapperを介さずに、そのままVEOSへ実装します。今年のデモで新たに完成したルートです。

デモ環境構成

VEOS上では、複数のvECUを同時に稼働させ、CAN・LIN・Ethernetなどの車載ネットワークを介したECU間通信や、プラントモデルのシミュレーションが可能です。dSPACE製に限らず、サードパーティ製のvECUも統合できます。今回のデモでも、Vector環境で作成したvECUを、VEOS上の受信vECUとして動かす構成を示しました。

FMU出力ルートが加わる意味

FMU出力ルートの追加で、実装方式を選べるようになります。既存環境や開発体制に合わせて、Wrapperを介するルートか、FMUを使うルートかを選択できるためです。
また、FMUという標準的な形式でVEOSへ取り込めるため、Wrapperの実装工程を介さない分、構成がシンプルになることも見込めます。 大切なのは、どちらが優れているかではなく、お客様の開発環境に合わせて選べることです。ツールの組み合わせは、開発対象や体制によって一つひとつ異なります。選択肢が広がることは、既存のツール資産を活かしながらvECU環境を立ち上げる際の、現実的な助けになります。

2025年から2026年へ - より実践に近いデモへ

今年のデモは、2025年版からも進化しています。

使用した環境
2025年Vector社が用意したサンプル環境(Vector OpenSUT)を使ったデモ
2026年Vector社の「DaVinci」を使用し、テクノプロが実装した簡易BSWによる、より実践に近いデモ

サンプル環境ではなく、実際に作り込んだBSW(Basic Software)を使うことで、お客様の開発環境により近い形で、連携の有効性をご覧いただけるようにしました。

来場者の声から見えた、vECU/SILS導入のよくある3つの課題

展示ブースでは、自動車メーカーや自動車部品メーカーの開発担当の方々と、vECUやSILSの取り組み状況についてお話しする機会がありました。そこで複数の方から聞かれた声は、大きく次の3つの課題にまとめられます。各課題について、来場者の声をご紹介します。

JUC2026_テクノプロブース画像

① 既存のツールを活かしたまま、連携させたい

すでに複数のツールを使っている現場から、次のような声が聞かれました。

  • 「Vector環境のSILSはすでにある。VEOSと組み合わせる話があれば聞きたい」(自動車部品メーカーの方)
  • 「vVIRTUALtargetも使いながら、各社のツールを評価している」(自動車部品メーカーの方)
  • 「HILSからSILSへの移行を検討中。その際に、他社ECUとの連携に課題がある」(自動車部品メーカーの方)
  • 「VEOSと他ベンダーのツールとの連携を試みたことがあるが、うまくいかなかった」(開発企業の方)

ECU開発の現場では、dSPACEやVectorなど、複数のツールがすでに使われています。これまでのツール資産を活かしたまま、他のツールとつなげて使いたい。これが、複数の来場者の方に共通する声でした。

② SILSとHILSを、切り離さずに進めたい

SILSとHILSの関係については、次のような声がありました。

  • 「vECUには関心があるが、現状はサプライヤに任せている。HILSとの連携や、フロントローディング(開発の前倒し)を進めたい」(自動車メーカーの方)

③ 構築を担うリソースが足りない

vECU環境の構築については、次のような声がありました。

  • 「仮想化に興味はあるが、リソース不足で実現できていない」(自動車部品メーカーの方)
  • 「vECUの生成に苦労している」(自動車部品メーカーの方)

導入の意欲はあっても、構築を担う人手が足りない。こうした声が、来場者の方々から聞かれました。

テクノプロがご支援できること

展示では、vECU環境の構築に向けて、テクノプロが対応できる次のエンジニアリングをご紹介しました。複数ツールの連携、SILSとHILSの連携、構築のリソース不足といった現場の課題に向けて、これらのエンジニアリングをご提案しています。

  • Vector開発環境を再利用したVEOSへのLevel 3 vECUの実装
  • dSPACE社・Vector社と連携したvECUのWrapperエンジニアリング
  • 「VEOS」×「Vector OpenSUT」のSILS環境構築エンジニアリング
  • 【新規】dSPACE SystemDeskを用いたV-ECU生成のエンジニアリングサポート
  • 【新規】vVIRTUALtargetのFMU出力方式によるvECU実装(今回の展示でデモ環境を実演)

テクノプロ コンサルティング・パートナーズ社は、vECU環境の構築にとどまらず、ECUの設計・開発支援、HILS環境の構築・運用、テスト自動化を含む検証環境の整備まで、あわせてご相談いただけます。

検証で終わらせず、開発に取り入れるために

vECU環境は、構築して終わりではありません。VEOSを中心とした検証基盤は、テスト自動化やCI/CDとの連携にも対応しており、継続的な評価の仕組みとして育てていくことができます。さらに今後は、この検証基盤をクラウド上へ拡張することも視野に入れています。 まずは、既存のツール構成のままどこまでつなげられるか、どの工程から仮想化を始めるかを整理するところから、お気軽にご相談ください。

よくある質問

Q1. FMU出力ルートとWrapperを介するルートは、どう使い分けますか?

A. 標準化されたFMI(Functional Mock-up Interface)準拠でモデルを出力できる場合は、FMU出力ルートが適しています。Wrapperエンジニアリング工程が不要になるため立ち上げが速く、コストも抑えられ、ベンダーを問わずVEOSへ比較的容易に統合できます。一方、出力ツールがFMI標準に完全準拠していない場合や、通信スタック(CAN/LIN/Ethernet等)のタイミング・信号粒度を既存のVEOS環境や他のvECUに精密に合わせ込みたい場合は、Wrapperルートでカスタムの変換層を実装し、個別要件にきめ細かく対応します。
「標準インターフェースでまず素早く始めたい」ならFMU、「精度や独自仕様への対応が必要」ならWrapper、重要度に応じて両ルートを併用するハイブリッド構成もご提案可能です。

Q2. 自社で開発した既存モデルやAUTOSAR BSW資産を流用できますか?

A. 可能です。VEOSはdSPACE製に限らずサードパーティ製のvECUを統合できるため、既にお持ちのモデル資産やBSW実装を活かしながら、不足する部分だけをWrapperエンジニアリングやFMU変換で補う構成が取れます。特定ツールへの作り直しを前提とせず、既存資産を最大限活用した統合をご提案します。

Q3. 導入までの期間や体制はどれくらい必要ですか?

A.  規模や要件により異なりますが、実績ベースでは数か月〜1年程度が中心です(例:SILS環境構築で6か月・20人月、MBSE導入で12か月・PM/PL各1名+メンバー2名)。まずは現状の開発環境やお悩みをヒアリングした上で、スモールスタート(PoC)から始め、段階的に本格導入へ拡張するアプローチもご提案可能です。

Q4. vECU/SILSの導入を検討していますが、まず何から始めればよいですか?

A. 本サイトのお問い合わせフォームから、無料の個別相談をお申し込みください。情報収集の段階でも、お気軽にご相談ください。ご相談の際には、導入事例の詳細もご案内可能です。まずは情報を整理したいという方は、「シミュレーション開発スタートガイド」や、モデルベース開発の基礎記事をご覧ください。


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